実際人は次のようなことを熟慮すべきである。明らさまに愛するのはひそかに愛するよりも美しく、しかももっとも高貴にもっとも優秀な者をーたとい彼が他のものよりは顔貌が醜いにせよー愛するのは特に美しいといわれていることを。さらにまた、万人が恋する者に与うる異常なるーしかも何か醜悪な行いのあった者には決して与えられぬごときー鼓舞を。かつ恋愛における成功は誉とせられるが、その不成功は恥辱とせられる。慣習はさらにまたその勝利者となるためならば異常事を行うあらゆる自由を愛者に与え、しかもそれに対して賞賛を受けることすら許している。ところがこの行為は、もし誰かが何かこれ以外の目的を追求して、これを達成するためにあえて為したとすれば、フィロソフィヤから非常に手厳しい非難を招かずにはいられぬ種類のものなのである。
プラトン「饗宴」