2016年8月12日金曜日

欲望は野心と支配を動かす

  人は最も文明的な、ヨーロッパのどこかの州における人間の生活と、新インドの最も野蛮な、どこかの地方における生活との間に、どれほど距りがあるかをよく考えてもらいたい。彼は、単に援助や福祉のゆえばかりでなく、生活状態の比較によっても、まさしく「人は人に対して神である」と、当然言うことができるほど、差異があると判断するのであるろう。そしてこのことは、土地でも風土でも体質でもなく、まさに技術が与えるのである。
 さらに、発見された事物の力と効能と結果とを、見守ることが望ましい。それらは他でもないかの三つのこと、古代人には知られず、その発端はたとい近くであっても、あいまいで世に知られている三つのこと、すなわち印刷機、火薬、および航海用磁針に明瞭に示される。
 というのも、この三者は世界の事物の様相と状態とを変革したからでだが、すなわち第一はのものは文筆的なことがらにおいて、第二は戦争関係のことで、第三は航海に関することにおいて、そしてそこから、数限りない事物の変化が続いた。したがって、人間的な事がらに対して、より大きな効果および影響のごとき、及ぼしたとは見えないほどである。。
 のみならず人々の野心の三つの種類、いわば程度を区別することも、不当ではないだろう。第ーは、自分のの祖国において、自分の力を伸ばそうとと欲する人々のそれであって、この類の野心は通俗的で、また変性している。第二は、祖国の力と支配を人類の間に伸長することに努める人々のそれであって、これは前のより、品格はあるが、しかし劣らず欲望に動かされている。
 ところがもし人が、人類そのものがも全世界への力と支配とを、革新し伸長することに努めるとしたならば、疑いもなくその野心こそは、残余のものに比べて、より健全でもあればより高貴であるもある。しかるに人間の事物への支配は、ただ技術と、知識のうちにある。自然はこれに従うことなくして、命令されないからである。

フランシス・ベーコン「ノヴム・オルガヌム」