2016年9月29日木曜日

欲望は悪を好み善を目の敵

 スペイン人は、王が部下を小刀と綱以外戦闘用の武器も身を守る道具を携えず、全員率いてカルマルカの町に近づいて来たことを知り、町から一レグワ半離れたコノクまで出向き、彼らを迎えた。インディオが集合していた広場に通じる出入り口を四カ所占領し、その結果広場は完全に封鎖されてしまった。

 インディオは、ひとり残らず、まるで羊のように閉じ込められた。インディオは大勢いたので、身動きがとれず、また、武器も携帯していなかった。スペイン人は凄まじい勢いで広場の中央を目指して襲いかかった。彼らは、インディオたちが喚声を上げていたので、馬、県、火縄銃をくしして、さながら羊を屠殺するかのように、インディオを殺し。スペイン人に刃向かったインディオはひとりもいなかった。その場に居合わせた一万人のインディオのうち、惨殺を免れたのは二百人にも満たなかった。殺戮を終えると、スペイン人はインディア王のアタグゥルパを牢に連行し、その夜一晩中、首に鎖をかけ、裸のまま監禁した。

 しばらくすると、スペイン人が暮らせていけるよう、部下ひとりひとりに例外なく貢ぎ物を差し出させた。その一方で、先祖代々受け継いだ莫大な量の財宝をスペイン人に差し出した。スペイン人たちは受け取ってすかり満足した。

 ところが、人間の欲望は測り知れないほど深く、数年経過すると、スペイン人もすっかりその虜になってしまった。スペイン人はあらゆる悪を好み善を目の敵にする悪魔に魅入られ、どのように責め立てれば、すでに手に入れた金銀をインディオからせしめることができるかを密かに謀議を図るようになった。

テイトゥ・クシ・ユパンギ「インカの反乱ー被征服者の声」