2018年2月11日日曜日

政治家たちは、節制や正義の徳を無視して、愚にもつかぬもので国家を腹いっぱいにしてしまった。

 つまり、人びとが欲しがっていたもので、もてなしたなら、人びとにご馳走をした連中、その連中を君は褒めそやしているのだ。また、人びとのほうは、この連中が国家を大きくしたのだと言っているが、事実はしかし、あの昔の政治家たちのせいで、国家はむくんでふくれ上り、内部は膿み腐っているのだということに、気がつかないでいるのだ。なぜなら、あの昔の政治家たちは、節制や正義の徳を無視して、港湾だとか船渠だとか、城壁だとかとか貢租だとか、そういった愚にもつかぬもので国家を腹いっぱいにしてしまったからなのだ。だからあとで、あのいま言われたような病気の発作が起った場合には、人びとはその責任を、ちょうどその時時傍にいて忠告する人たちに負わせて、この災難の責任者のほうは、これを褒めそやかすであろう。そこで、要心しないと、人びとは君に向かって攻撃してくるかもしれないのだ。人びとが新たに獲得したものだけでなく、最初から持っていたものまでも、その上に失うようなことになった場合にはだよ。君にしても、その災難の真の責任者ではなくて、おそらくは副次的な責任があるだけだろうにね。

プラトン「ゴルキグアス」