2017年11月21日火曜日

東方の者は統一のために差別を見失ふに引きかえ、西方の者は差別のために統一を忘れる。

 ドイツ思弁哲学は古へのソロモンの智慧と正反対を成している。これは日の下に新しき何ものもないと見るに引きかへ、それは新しきもののみを見る。東方の者は統一のために差別を見失うに引きかえ、西方の者は差別のために統一を忘れる。彼らは永久に一様なものに対する自己の無関心を、愚妄の無感情にまで押し進めるに引きかえ、之れは多種多様なものに対する自己の感受性を、恣まな想像の病熱にまで高める。ここにドイツ思弁哲学というは、現在支配的ある哲学 ー ヘーゲル哲学を特に意味するのである。けだしシェリング哲学は本来一の外来種 ー ゲルマンの土地に育った古への東方的同一性 ー であって、従ってシェリング学派の東方に対する性向は、この学派の本質的性向であるのと同じく、その反対に、西方に対する性向と東方の卑下がヘーゲル哲学とその学派との特徴なのである。同一哲学の東方主義に対し、ヘーゲルの特徴的要素は差別という要素である。

ルートヴィヒ・アンドレアス・フォイエルバッハ「ヘーゲル哲学の批判」