2017年11月3日金曜日

狂気に精神状態が、精神錯乱における観念連合であり、固着観念における奇異な論理である。

 常識のあべこべには名称があるであろうか。疑いもなく、狂気の或る形態の中に、人はその急性のものかもしくは慢性のものに出くわす。それは多方面から固着観念に似ている。しかし、狂気一般も固着観念も決して我々を笑わすことはないであろう。なぜならそれは病気だからだ。それは我々の憐憫の情を起こさせる。笑いは我々の知っているように情緒とは相容れない。もし笑いを誘う狂気があるとしたなら、それは精神の一般的健康と両立しうる狂気、健全なる狂気とでも言えるものでしかありえないであろう。
 ところで、どの点からも狂気にそっくりの精神の健全な或る状態があって、そこに我々が見出すのは、精神錯乱における同様の観念連合であり、あるいは固着観念における同様な奇異な論理である。それは夢の状態である。そこで、我々の分析が不正確であるのか、でなければそれは次のような定理のうちに定式化されるものでなければならぬのだ。こうだ、滑稽的不条理は夢の中の不条理と同じ性質のものである。
アンリ・ベルグソン ( 性格のおかしみ )「笑い」