かつて光り輝いた天才のすべては、この一つの主題について意見を同じくしている。にもかかわらず彼らでも、このような人の心の闇には、どんなに驚いても驚き足りないであろう。どんな人でも自分の地所をとられて黙っている者はいないし、また領地の境界について、たとえ小さなもめ事が生じても直ちに投石や武器に訴える。だが、自己の生活のなかに他人が進入することは許している。いや、それどころか、今に自分の生活を乗っ取るような者でさえも引き入れる。自分の銭を分けてやりたがる者は見当たらないが、生活となると誰も彼もが、なんと多くの人々に分け与えていることか。財産を守ることがけちであっても、時間を投げ捨てる段になると貪欲であることが唯一の美徳である場合なのに、たちまちにして、最大の浪費家と変わる。
ルキウス・アンナエウス・セネカ「人生の短さについて」