2017年8月6日日曜日

人に知識なければ国を治ること能わず、国を乱したるにも規則なし、皆無知文盲の致す所なり。

 天下は太平ならざるも、生の一身は太平無事なり。かねて愚論申し上げ候通り、人に知識なければもとより国を治ること能わず。甚しきに至りては国を乱したるにも規則なし。皆無知文盲の致す所なり。今人の知識を育てんとするには、学校を設けて人を教えるに若くものなし。依て小生義は当春より新銭座に屋敷を調え、小学校を開き、日夜生徒ともに勉強致し居り候。この塾小なりといえども、開成所を除くときは江戸第一等なり。然ればすなわち日本第一等乎。校の大小美徳をもって論じれば、あえて人に誇るべきにあらざれども、小はすなわち小にして規則正しく、普請の粗末なるはすなわち粗末にして掃除行き届けり。僕は学校の先生にあらず、生徒は僕の門人にあらず。これを総称して一社中となづけ、僕は社頭の職掌相努勤め、読書は勿論、眠食の世話、塵芥の始末まで周旋、その会社の社中にも各々その職分あり。

福沢諭吉「福沢諭吉の手紙」