第一に文学は重圧の感情に表現を与えようとする。社会生活の秩序は既に古く、老い朽ち、風にも堪えぬ脆弱なものになってしまったという。パリでは新しい文学が社会主義と隣り合って、凄んでいる。この作家たちは描写する、描写しながら分析をする。彼等はこれに酔う、そして已が手でその疾病と死を摘別する。しかして事実の表現において真実に忠実であり徹底的かつ的確でなければ解決は得られない。随って第二に新しい文学、美術は自然主義であろうとする。それは現実的なものをあるがままに露わにし、分析しようとする。この文学の最も著しい傾向は、何よりも先ず人間性の本姓の裡に生理的なもの、むしろ獣的なもののあるのを明らかに示そうとするところにある。それは抗い難い本能であって、ただ治世のみがその道を照らし得るのである。
ヴィルヘルム・デルタイ「近代美術史 ー 近代美学の三期と現代美学の課題 ー」