2017年10月25日水曜日

愛国心は最大の危険であり、愛国心の毒々しさを増大するのは、天災、疫病、飢饉よりも恐るべきである。

 疑いもなく、言うところの愛国心は、文明が現在さらされている最大の危険であり、なんであれ愛国心の毒々しさを増大するものは、天災、疫病、飢饉よりも恐るべきものである。現在、若者たちの忠誠心は、一方では親に、他方では国家にというふうに、二分されている。万一、若者の忠誠心が国家にのみにささげられるようになれば、世界は現在よりも一段と残忍なものになる、と危惧するべき理由は十分にある。したがって、国際主義の問題が未解決のままであるかぎりは、子供の教育と世話を国家が分担する量が増えることには、その明白な利益を上回る由々しい危険がある、と私は考えている。
 もしも、国家が国際主義的であるなら、国家が父親の肩代わりをすることは文明にとって利益であるが、国家が国家主義的で軍事的であるかぎりは、戦争が文明なあたえる危機が増大することになる、ということである。家族は、急速に衰退しつつあるが、国際主義の成長は遅々としている。だから、事態は、大いに憂慮されてしかるべきである。それでも、望みがないわけではない。将来は、国際主義が、いままでよりも急速に成長するかもしれないからだ。われわれに未来を予測することができないのは、あるいは幸運なことかもしれない。だから、われわれは、未来が現在よりもよくなることを期待する権利はないにせよ、希望する権利はあるのである。

バートランド・ラッセル「ラッセル結婚論」