2017年10月28日土曜日

殺人の衆きときは悲哀みて泣き、戦勝つときは喪礼を以て之に処る。

安民章第三

賢を尚ざれば、民をして争はざらしむ。得難き貨を貴ばざれば、民をして盗まざらしむ。欲すべきを見ざれば、心をして乱れざらしむ。是の以に聖人の治むるや、その心を虚しくしてその腹を実し、その骨を強くしてその志を弱からしめ、常に民をして無知無欲ならしむ。夫の知者をして敢て為さざらしむれば、即ち治まらざるなし。

易性章第八

上善は水の若し。水は善く万物を利するも争わず、衆人の悪むところに処る。故に道に幾きなり。居には地を善とし、心には淵なるを善とし、与ふるには仁なるを善とし、言には信あるを善とし、政には収まるを善とし、事には能あるを善とし、動くには時は能あるを善とし、動くには時を善とす。夫れ唯争わず、故に尤なきなり。


檢欲章誤植第十二
五色は人の目を盲ならしめ、五音は人の耳を聾ならしめ、五味は人の口を爽よしめ、馳騁田猟は人心をして発狂はしめ、得難き貨は人の行を妨げしむ。是の以に聖人は腹のためにして目のためにせず、故に彼を去りて此を取る。

偃武章三十一
夫れた佳兵は不詳の器にして物或は之を悪む、故に有道者は処らず。君子居れば則ち左を貴ぶも兵を用いるときは則ち右を貴ぶ。兵は不詳の器にして君子の器にあらず、已むを得ずして之を用いるときは、恬惔を上しとなして勝つも美しとはせず。而之を美しとすれば是れ人を殺すことを楽しむなり、夫れ人を殺すことを楽しむものは則ち志を天下に得べからず。故に吉事には左を上び凶事には右を上ぶ。是の以に偏将軍は左に居り、上将軍は右に居る。殺人の衆きときは悲哀みて泣き、戦勝つときは喪礼を以て之に処る。
老子