欧州人は顔に刀傷があることは醜いこととされている。日本人の間では、戦場で敵から顔などに受けると名誉とされ、背後に切られると卑怯、恥辱とされる。
欧州人は苦しみをやわげるために髪を刈りまたは頭を剃る。日本人は悲しみや喪、恩寵を失ったために頭を剃る。
欧州人の剣の利鈍を材木や動物で試される。日本人は死体の身体で剣を試みる。
欧州人は20歳の男子でも、ほとんど剣を帯びることはない。日本人の武士は元服すれば刀と脇差を帯びて歩く。
欧州人は生児の健康のために乱刺して血液を採る。日本人は血液は採らないが火の塊で焼く。
欧州人は罪の償いと救霊を得るために修道会に入る。日本人は逸楽と休養の中に暮らし、労苦から逃れるために教団に入る。
欧州人は清貧の誓いを立て世俗の富貴から遠ざかる。日本人では檀家を食い物にしてあらゆる手段を講じて自ら富み栄えることを計る。
欧州人は良き修道士は地位や名声の上がることを非常に嫌い畏れる。日本人は昇進には莫大な金銭がかかり、誰もが死ぬほどそれを求める。
欧州人の修道士は常に平和を念願し、戦争は甚大な苦痛である。日本人では戦争を仕事とし、戦闘に赴くために領主に雇われる。
欧州人の修道士は心の純粋と清浄を得るために最も務める。日本人では住院や庭、寺院はきわめて清浄にするが、霊魂について忌まわしい。
欧州人は来世の栄光と却罰、霊魂の不滅を信じている。禅ではこれらをすべて否定し、生まれることと死ぬ以外は何もないとしている。
欧州人は唯一デウス、唯一の信仰、唯一の洗礼、唯一のカトリック教会を唱導する。日本人は、十三のし宗派があり、すべてが礼拝と尊崇は一致していない。
欧州人は説教壇で説教をおこなう。日本人は大学教授のように椅子に着いて説教を行う。
欧州人は主人が死ぬと泣きながら墓まで送って埋葬する。日本人ではその腹を裂き、多数の者が指先を切り取り屍を焼く火の中に投げ込む。
欧州人は完全に武装具を着けなければ戦いに赴かない。日本人は首に首当を着けただけで十分である。
欧州人は自殺を最も思い罪としている。日本人は戦争の際に力尽きた時は、腹を切ることが、勇敢なこととされる。
欧州人は死刑執行人になることは最大の屈辱である。日本人はどの人も死刑を執行し、自らの誇りとしている。
欧州人は食欲がないと無理にでも食べさせる。日本人はそれを残酷と考え、食欲のない病人は死ぬにまかせている。
欧州人は財産を失い家を焼くことに大きな悲しみを表す。日本人はすべてのことに関して表面上はきわめて軽く過ごす。
欧州人は、人に正当な理由こがあり身を守るためなら、他人を殺しても人の生命は助かる、日本人では、他人を殺すと死ななければならないが、姿を表さないなら他人が代わりに殺される。
欧州人は召使や従者の懲戒は鞭打ちで行う。日本人では首を切ることが、懲戒ともなる。
欧州人は怒りの感情を大いに表し、短慮を抑制しない。日本人は特異の方法で抑え、中庸、思慮をする。
ルイス・フロイス 「ヨーロッパ文化と日本文化」