2016年9月23日金曜日

慣習から複雑から単純の体制は認め悪い

 生命は真実には何によって構成されるか、またこの自然的現象が一つの固体内に生じその存続期間を打長し得るために必要な条件は如何なるものであるか。あらゆる体制の中で最も単純なものが生命の存在に必要なる諸条件の必須のものだけを示し、それ以上に迷わすような何も示していないので、外見上かくも困難な問題に解決を与える適確な手段が見出されるのかは単純なる体制以外にはない。
 生命の存在に必須な諸条件は、複合程度の最も少ない体制に、最も単純なな限度に限られてではあるが揃って見出されるので、問題は、如何にしてこの体制が何等かのの変化原因により、より複雑な体制を生ずることができ、動物段階の全域について観察される段々とより複雑な体制を発生させ得たかを知るにあった。観察の結果到達した次の二つの考察を用いて、この問題の解決の途を見出した。
 第一に、一器官の反復使用はその発達を助成しそれを大きくすることさえあり、これに反して、一器官の使用の廃止は、それが習性的となれば、その発達を妨げそれを萎縮させ次第に小さくし、そしてこの使用の廃止が、生殖にとって相次いで生じるすべての個体によって長期間継続されると、その器官の消失を来すということを、多数の既知事実が証明している。これによって、環境条件の変化が動物のある種類の個体にその習性を変更するよう強制すると、使用度の減じた器官は少しづつ萎縮し、使用度の増した器官はますます発達し、それらの個体が習性的に行う使用の度に力と大きさを獲得される。
 第二に、流動体を含む非常に柔軟な部分におけるその流動体の運動力について、生物体内の流動体の運動が加速されるに従ってその流動体が運動の場としている細胞組織に、変化を与え、そこに通路を開き種々の脈管を形成し、ついにその流動体が見出される体制の状態に従って各種の器官を造るに到る。
 諸動物に関する我々の全般的配類は、今日までの状態では、自然が生命を有する成生物を次々に発生させるにあって遡った序次そのものとは逆な配位を表しているのであって、しばらく慣習に従って、最も複雑なものから最も単純なものに進めば、体制の構成における進歩の知識を補足することが困難となり、この進歩の諸原因、此の方彼方でその進歩を中断させている諸原因の何れわも認め悪い状態に置かれるのである。

ジャン・バティスト・ラマルク「動物哲学」