2016年10月23日日曜日

習慣は変容を絶えず減じる

 生命は、外面的世界において、孤立して他にたつところなき一世界なのではない、それは自己の存在条件によって外面的世界につながれ、この世界の一般的法則に服している。生命は、絶えず外からの影響を受ける、唯、絶えずこれをうち超え、これにうち克つのである。故に生命は、自己の条件いいかえけば質料なる、存在のより低き形式との関係によって変化を受けるのであるが、また自己の本性そのものなる、より高き能力によって、変化を自ら始めると見られる。生命は受容性と自発性の対立を含んでいる。
 生物が自分以外のものから受取る変化と反復の一般的結果は、この変化がその生物体を破壊するに至らぬ限り、生物体がそれから受ける変容は絶えず減じて行く、ということである。これに反して、生物は、自身から発する変化を繰り返し或は長くつづけたならば、後尚もその変化を生む、そしてそれを再び生む傾向を強めるやうに思はれる。すなわち、外来の変化は生物にとって次第に無縁のものとなり、自ら起こした変化は反復にゆって自らに固有のものとなる。感受性は減じ、自発性は増す。これが、一変化の連続または反復によってあらゆる生物の中に生ずると見える素質即ち習慣の、一般的法則なのである。ところで、生命を形成する自然の特質は、受容性に対する自発性の優越ということであるから、習慣は単に自然を前提にしているのみではない、それは正に自然の進む方向へと発展するのである。同じ方向に力を添えるのである。

フェリックス・ラヴェッソン「習慣論」