2017年7月9日日曜日

ある歴史家が市民たちに武器をもって襲いかかった戦いのことをごたごたとわかりにくく書いてあった。

 ところが、その歴史家というものがたいていは嘘をつくものだよ。少なくとも昔はそうだったね。わたしはジェイムズの『社会民主党史』とかいう本の中で、1887年かなんでもその頃に、この場所(トラファルガー広場: 1805年の海戦を記念して1845年に設置された)で起こったある戦いのことをごたごたとわかりにくく書いてあったのを読んだことがある。その話によると、なんでもある人びとがこの場所で区民大会というか、まあ何かそういったことをやろうとしたところが、ロンドンの都庁というか、参事会というか、とにかくそうした野蛮な、乳臭い馬鹿者どもの集りが、その市民たち(当時はそういうふうに呼んだものだ)に武器を以って襲いかかった。どうもあまりおかしな話でほんとうのこととは思えない。しかしこの本が伝えるところでは、このことから大したことが何一つ生じたわけでもなかったということだ。これこそますますもってこっけいで、とてもほんとうとは思えない。

ウィリアム・モリス : 第7章 トラファルガー広場「ユートピアだより」