2017年7月31日月曜日

すべて理性を持たないものを自分に従わせ、自由にして自分の法則によって支配することが人間の最後の究極的目的である。

 すべて理性を持たないものを自分にしたがわせ、これを自由にそして自分の法則によって支配することが人間の最後の究極的目的である。この最後の究極的目的は、人間が人間であることをやめてならず、人間が神になってならないならば全然達成されないものであるとし永遠に達成されないものであらねばならない。人間という概念にはその最後の目標は達成されず、これに至る道はかぎりないものでなければならないことが含意されているのである。そこで、この目標に達することは人間の使命ではない。しかし人間はこの目標にますます近づくことができ、また近づかねばならない。したがってこの目標にかぎりなく近づくことがかれの人間としての、つまり理性的ではあるが有限な存在者、感性的ではあるが自由な存在者としてのほんとうの使命である。ーところであの自己自身との完全な一致を最高の意味で完全性と名づけると、また名づけるのは無論さしつかへないことである。で、そうすると完全性ということは人間のきわめて到達しにくい目標ということになる。しかしかぎりなく完成していくことは彼の使命である。人間が現存しているのはみづからますます道徳的により善くなって行って、自分のまわりのあらゆるものを感性的により善くし、人間を社会の中で考察すれば、道徳的にもより善くし、こうして自分自身をますます幸福にして行くためである。
ヨハン・ゴットリーブ・フィヒテ「学者の使命 学者の本質」