2017年7月29日土曜日

現代の政治家たちは、金の計算をやめて、金では買えないものはないが、習俗と市民とは例外であることを反省してもらいたい。


 キュロスのペルシア王国は、ペルシアの最も小さな太守よりも、なお貧しい一君主に率いられた三万の兵によって征服されました。また、あらゆる民族の中で最もみじめなスキタイ人は、世界最強の君主達に抵抗しました。二つの有名な共和国が、世界の支配を争いました。2つの有名な共和国が、世界の支配を争いました。一つはひじょうに富み、他はなにももちませんでしたが、前者を滅ぼしたのは後者でした。世界のすべての富を併呑した後、こんどは、ローマ帝国が、富が何であるかをさえ知らない人々の餌食になりました。フランク人は、ガリア人を征服し、サクソン人はイギリスを征服しましたが、彼らは、剛勇と貧困の他には、何の財産ももっていなかったのです。数枚の羊の皮で、その欲望がみちされていた一群の貧しい岳人が、傲慢なオーストラリア人征服した後、当時ヨーロッパの専制君主たちをふるえあがらせていた裕福で恐ろしいブルゴーニュ家を粉砕しました。最後に、東西両インドの全財産に支えられていたカール五世の後継者がもっていたあらゆる権力も知力も、一握りの漁夫にぶっつかって、壊滅するにいたりました。現代の政治家たちが、金の計算をやめて、これらの実例を反省してくれれば、また、金では買えないものはないが、習俗と市民とは例外であることを一発でもわかってくれれば、ありがたいのですが。

ジャン=ジャック・ルソー「学問芸術論」